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ジーイング代表、前田 仁(Jin Maeda)です。 これまで、メーカーのエンジンに対する考え方、パワーと耐久性とバランス、ボディ補強、サスペンションのセッティング、 コンピューターのセッティング等、車に関するあらゆることを学んできました。このブログでは、 日々の仕事の様子を中心に発信しながら、車に楽しく乗りたいと思っている方々に、それらをフィードバックしていきます。
Automatic translation / From Japanese to English >
I have added an automatic translation in the hope that it will convey at least some of the nuances.2025.11.09
シリンダーヘッドの歪みとヘッドガスケットの関係
エンジンの中で、シリンダーヘッドとヘッドガスケットは「燃焼圧を密閉する最後の砦」です。
たった数ミクロンの歪みでも、その密閉が崩れれば性能低下やトラブルの原因になります。
今回は、感圧紙を使って「見えない歪み」を目で確認してみました。
⸻
① 技術的な視点:感圧紙が見せる密着
シリンダーヘッドをエンジンブロックに規定トルクで締め付けた状態で、
間に「感圧紙」を挟みます。
この紙は、圧力が強い部分ほど赤く色が濃くなるという特殊な仕組みを持っています。
結果を見ると、各シリンダーボア6箇所にあるリング状のビード部分が赤く染まっています。
ここは燃焼圧を閉じ込めるために最も強く押さえる必要のある場所で、
ヘッドガスケットの中でも最も厚みのある構造になっています。
ところが、注目すべきは1番シリンダーと6番シリンダーの端部です。
どのメーカーのガスケットでも、そこだけ赤が濃く出ていました。
(青マークの部分4箇所)
つまり、他の場所よりも極端に強く押しつけられていることを意味します。
⸻
② ヘッドが“バナナ状”にたわむ理由
ではなぜ端のシリンダーだけが強く押されるのでしょうか?
その答えは、シリンダーヘッドのわずかな歪みにあります。
シリンダーヘッドは14本のボルトで均等に締め付けられますが、シリンダーヘッドは剛性が弱くヘッドガスケットの凸凹の影響を受けます。
締め付けトルクがかかると、2番シリンダーから5番シリンダーまである程度均一に面圧力が掛かり、1番シリンダーと6番シリンダーの両端がより強く引き寄せられる形で、全体がバナナのように湾曲します。
つまり、ヘッドボルトの締め付け力に負け、ヘッド自体がわずかにたわむのです。
感圧紙で赤く濃く出た部分は、まさにこの「たわみ」が集中する端の領域。
この現象は3種類のヘッドガスケット全てで同じ結果に見えないでしょうか
③ 歪みを“数値”で見る
私はかつて自動車メーカーで、5年後に市場投入されるエンジン開発に携わっていました。
その頃は、性能試験・耐久試験・フリクションテスト・冷却水流解析など、予算を惜しまず徹底的に研究することが許された、いわば“黄金期”バブル時代でした。
その経験を活かし、今回のテストではシリンダーヘッドの燃焼室に歪みゲージを貼り、実際にどこがどれだけ歪むのかを測定しました。
(数値は企業秘密です。これは私の財産の一部ですのでご容赦ください。)
結果、1番シリンダーと6番シリンダーの燃焼室全体とバルブガイド付近が他シリンダーヘッドにくらべ最も大きく歪んでいることが確認できました。
燃焼室の周囲には冷却水が流れるウォータージャケットがありますが、そこは中が空洞のため、金属的な剛性が弱く、歪みが発生しやすい構造なのでしょうね。
ヘッドボルトの締め付けで生じた湾曲が、まさにその空洞部分を通じて1番・6番シリンダーの燃焼室に影響していた、ということになります。
⸻
結論:端のシリンダーが「犠牲」になる理由
もし1番シリンダーの前に「0番シリンダー」、6番の後ろに「7番シリンダー」が存在したなら、おそらく1番と6番は歪まなかったでしょう(笑)。
もちろんそんなエンジンは存在しませんが、この例えで“端の弱点”という現象を想像していただけると思います。
☆ 補足 画像に見られる感圧紙の赤色に変化した部分でヘッドボルト14箇所の周りが強く色づいています。
しかしボルト周りの圧力は均等では無く、ブロックの外方向の方が色が強いです。
それはシリンダー縦方向Y軸同様に横方向X軸もシリンダーボア周りを中心にX軸に歪んでいると言う見方です。
⸻
まとめ
• 感圧紙で密着のムラを「見える化」できる
• シリンダーヘッドは締め付けで“バナナ状”にたわむ
• 歪みは特に端の燃焼室に集中する
• 実験と経験の両面から、その現象を再確認
見えない世界をどう見える化するか。
そしてそれをどう理解し、どう改善に繋げるか。
それこそが、私のエンジンづくりの原点であり、探究の楽しさなのかも知れません。
Phase 8へ続く -改善-
シリンダーヘッドの歪みとヘッドガスケットの関係
エンジンの中で、シリンダーヘッドとヘッドガスケットは「燃焼圧を密閉する最後の砦」です。
たった数ミクロンの歪みでも、その密閉が崩れれば性能低下やトラブルの原因になります。
今回は、感圧紙を使って「見えない歪み」を目で確認してみました。
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① 技術的な視点:感圧紙が見せる密着
シリンダーヘッドをエンジンブロックに規定トルクで締め付けた状態で、
間に「感圧紙」を挟みます。
この紙は、圧力が強い部分ほど赤く色が濃くなるという特殊な仕組みを持っています。
結果を見ると、各シリンダーボア6箇所にあるリング状のビード部分が赤く染まっています。
ここは燃焼圧を閉じ込めるために最も強く押さえる必要のある場所で、
ヘッドガスケットの中でも最も厚みのある構造になっています。
ところが、注目すべきは1番シリンダーと6番シリンダーの端部です。
どのメーカーのガスケットでも、そこだけ赤が濃く出ていました。
(青マークの部分4箇所)
つまり、他の場所よりも極端に強く押しつけられていることを意味します。
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② ヘッドが“バナナ状”にたわむ理由
ではなぜ端のシリンダーだけが強く押されるのでしょうか?
その答えは、シリンダーヘッドのわずかな歪みにあります。
シリンダーヘッドは14本のボルトで均等に締め付けられますが、シリンダーヘッドは剛性が弱くヘッドガスケットの凸凹の影響を受けます。
締め付けトルクがかかると、2番シリンダーから5番シリンダーまである程度均一に面圧力が掛かり、1番シリンダーと6番シリンダーの両端がより強く引き寄せられる形で、全体がバナナのように湾曲します。
つまり、ヘッドボルトの締め付け力に負け、ヘッド自体がわずかにたわむのです。
感圧紙で赤く濃く出た部分は、まさにこの「たわみ」が集中する端の領域。
この現象は3種類のヘッドガスケット全てで同じ結果に見えないでしょうか
③ 歪みを“数値”で見る
私はかつて自動車メーカーで、5年後に市場投入されるエンジン開発に携わっていました。
その頃は、性能試験・耐久試験・フリクションテスト・冷却水流解析など、予算を惜しまず徹底的に研究することが許された、いわば“黄金期”バブル時代でした。
その経験を活かし、今回のテストではシリンダーヘッドの燃焼室に歪みゲージを貼り、実際にどこがどれだけ歪むのかを測定しました。
(数値は企業秘密です。これは私の財産の一部ですのでご容赦ください。)
結果、1番シリンダーと6番シリンダーの燃焼室全体とバルブガイド付近が他シリンダーヘッドにくらべ最も大きく歪んでいることが確認できました。
燃焼室の周囲には冷却水が流れるウォータージャケットがありますが、そこは中が空洞のため、金属的な剛性が弱く、歪みが発生しやすい構造なのでしょうね。
ヘッドボルトの締め付けで生じた湾曲が、まさにその空洞部分を通じて1番・6番シリンダーの燃焼室に影響していた、ということになります。
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結論:端のシリンダーが「犠牲」になる理由
もし1番シリンダーの前に「0番シリンダー」、6番の後ろに「7番シリンダー」が存在したなら、おそらく1番と6番は歪まなかったでしょう(笑)。
もちろんそんなエンジンは存在しませんが、この例えで“端の弱点”という現象を想像していただけると思います。
☆ 補足 画像に見られる感圧紙の赤色に変化した部分でヘッドボルト14箇所の周りが強く色づいています。
しかしボルト周りの圧力は均等では無く、ブロックの外方向の方が色が強いです。
それはシリンダー縦方向Y軸同様に横方向X軸もシリンダーボア周りを中心にX軸に歪んでいると言う見方です。
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まとめ
• 感圧紙で密着のムラを「見える化」できる
• シリンダーヘッドは締め付けで“バナナ状”にたわむ
• 歪みは特に端の燃焼室に集中する
• 実験と経験の両面から、その現象を再確認
見えない世界をどう見える化するか。
そしてそれをどう理解し、どう改善に繋げるか。
それこそが、私のエンジンづくりの原点であり、探究の楽しさなのかも知れません。
Phase 8へ続く -改善-
RB26ヘッドガスケットをゼロから見直し、違和感の正体を突き止めるまでの探求をまとめたシリーズです。感圧紙による検証や歪みの解析、そして改良ガスケット完成までの全プロセスを追いかけます。